三岐鉄道北勢線・西桑名~阿下喜 sanpo

 近鉄が赤字で手放した路線を、三岐鉄道という中小私鉄が引き取って廃線を免れた北勢線。西桑名~阿下喜間20.4kmの単線電化路線だ。この路線の大きな特色は、ナローゲージ、つまり線路の幅が狭い、軽便鉄道規格なのである。

 趣味的には面白いが、線路の幅が狭いということは、当然ながら速度制限も低いことになる。これは、基本的に車社会の地域では、スピードの点で命取りであろう。改軌してスピードアップするほどの投資効果も見込めず、よって近鉄は廃止の意向を示したのであった。三岐鉄道への移籍は2003年のことである。

 というわけで、かねがね一度乗ってみたいとは思っていたが、中途半端に便利な名古屋近郊なので、いつでも行けると思っているうちに機会を逸し、今日に至ってしまった。

e0028292_2334939.jpg まずは起点の桑名にやってきた。桑名は三重県だが、三重県で一番名古屋に近い市だ。名古屋への通勤通学客の乗降客数は多分三重県一であろう。そういう大都市圏にかかっていることで、どうにか廃止を免れることができたとも言えよう。但し、北勢線の起点は厳密には桑名ではなく、西桑名という別駅である。桑名駅自体はJRと近鉄、それに最近これも近鉄から経営された養老鉄道(元近鉄養老線)が、全て同じ駅に発着する。これらは別会社であっても中間改札すらなく、一体となっている。しかし元近鉄であっても北勢線だけは仲間はずれで、この西桑名駅へ行くには桑名駅の改札を出てちょっと歩かないといけない。駅名が違ってもほぼ同一駅という例も多いが(例・新王寺)、それに比べてもちょっと距離がある。私のように一生にせいぜい数回しか乗らない人間にとっては、それも面白さのうちだが、通勤通学で毎日乗り換える人は、やはりもっと近くあって欲しいと思うであろうし、場合によってはそこが車通勤にするかどうかの分かれ目になるかもしれない。と、そんな事まで心配しないといけないぐらいに、現代人は車の便利さに染まっている。実際、この西桑名駅は、桑名駅にもっと近い位置まで移設する計画があるらしい。

 何はともあれ西桑名。ローカル私鉄の起点にふさわしく、小ぢんまりした駅だが、自動改札機があるのにまず驚く。当然、切符も自動券売機で磁気券を購入する。時刻表を見ると、次の列車まで20分ほどある。終点の阿下喜まで行くのは日中は1時間に1本と、少ない。その間に途中の楚原までの列車がある。

 駅周辺をぶらぶらして時間をつぶし、発車時刻近くに駅へ戻り、自動改札を通って列車に乗り込む。一番後ろの車輛の後部に乗ってみた。ワンマンなので車掌はいない。空いているので特に感じないが、満席だと前の人の足がぶつかりそうなぐらいに狭い。やはりナローゲージである。11時20分発、定刻に発車。

 近鉄名古屋線と関西本線をぐるりと跨いでほどなく、最初の馬道。そして1キロ毎ぐらいにちょこちょこと駅があり、どこも多少の乗降客がある。西桑名だけかと思ったら、各駅に自動改札があるのに驚いた。駅はどこも綺麗で、規模が小さいことを除けば大都市近郊私鉄のようである。沿線は住宅が結構建て込んでいる。左下は2つ目の西別所。


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 4つ目の在良(写真右上)で最初の列車交換。時間的にあちらの方が乗客が多い。こちらは少しずつ乗客を減らしていく。左下は西桑名から6駅目の七和に停車中の車内。そして8つ目の東員(写真右下)まで来た。ここまでで24分。まずまずと言える。


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 ここで二度目の列車交換があり、今度はしばらく停車するのでホームに出てみる。まだ真新しい感じの島式ホームの駅で、駅周辺は 農地と住宅などが交じり合う、典型的な都市郊外の風情である。4分ほどの停車だっただろうか、上り西桑名行がやってきて、数名の客を乗せて先に発車、こちらも続いて発車する。

 駅間距離がだいぶ長くなって、車窓風景も長閑になり、東員から2つ目の楚原。終点の阿下喜まであと2駅だが、日中は半数の列車がここで折り返す。ここで実に9分も停車する。このダイヤには少々驚いたが、これでも以前より改良されたのだそうだ。朝夕はダイヤが違い、このような長時間停車はなく、最速列車は西桑名~阿下喜間46分だそうだが、日中の下り列車はちょうど1時間かかる。乗客が少ない時間帯だし、利用者の大半は西桑名~東員間あたりであろうから、全体への影響は小さいのかもしれないが、何とも歯がゆいダイヤである。ここ楚原は昔からの軽便鉄道の駅の面影がいくぶん残る風情の駅で、初めての私は9分停車も退屈しなかったが、しょっちゅう乗る人にはまだるっこしいダイヤに違いない。先頭車まで行ってみると、1輛目だけがクロスシート車であった。この車輛だけは、ある程度の客がいるが、残りはガラガラである。


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 ようやくやってきた阿下喜からの上りを待って、こちらも発車。すっかり客が少なくなり、次の麻生田までは、この線最長の3.7キロあり、時間も9分かかる。しかも麻生田も単線で交換できない。麻生田はこの線で一番田舎の風情を持つ駅で、乗降客もゼロであった。そしてあと5分走り、終着阿下喜に12時20分、定刻に着いた。


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 後で調べてみると、東員は2005年に前後の駅を統合してできたばかりの新しい駅であるとか、その他にも駅の統合や廃止が色々と行われたことなどがわかった。何かで読んだ記憶はあったが、しっかり認識しないで乗りにきてしまった。そういった事をちゃんと調べて知ってから乗れば、それはそれで別種の感想を持てたかもしれないが、知らずに一度乗ってみた勝手な感想としては、古き良き時代の軽便鉄道を味わうにしては、自動改札などを含め、近代的すぎて、面白くない。沿線風景も、悪くはないが、格別ではない。モダンな通勤通学の鉄道としては、これでも以前より改善されたのだそうだが、最速46分と謳っているところに60分を要する交換待ちの多いダイヤなど、車社会の現代人が日常的に頻繁に利用するには、まだまだ難がある。30分間隔の等時隔ダイヤにこだわらず、各列車の所要時間を最短にするようなうまいダイヤができないものかと、素人ながらに思ってしまった。

 阿下喜は長閑な所であったが、駅はリニューアルされていて綺麗で、ローカル線の終着駅といった味わいは稀薄である。それを残した所で外部から大勢の客を呼べるわけでもないので、むしろそういった田舎臭さを払拭して、日常利用を定着させようとしたのだとも思う。駅前も広々としている。私は勝手に、何となく狭い路地の古びた町並みがあるような所かと思っていたが、全く違っていた。
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by railwaytrip | 2009-04-11 11:20 | 中部地方


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