肥薩線・吉松~人吉

 その昔から、日本三大車窓の一つとして知られている区間だが、今は極度のローカル線になってしまい、存続すら危ぶまれるという、肥薩線のこの区間。急行もなくなった今、地元のローカル利用は僅かで、あとは観光利用を増やして存続を図ろうとしているかに思われる。

 今回、その区間を吉松から人吉へと抜けてみることにした。吉都線からの接続はよく、一輛のワンマン気動車は吉松を発車。乗客は10人ほどで、観光客とおぼしき人が大半である。いかにも鉄道マニアといった感じの人はない。車輛は何と座席の一部をお座敷に改造してあり、観光客受けを狙っているのが露骨に感じられる。

 吉松から真幸までは、序奏という感じだ。吉松自体がある程度、高原のイメージの所にあり、そこからぐんぐんと登っていくと、本当の高原らしくなり、右手にはえびの市方面の平地の風景が広がる。そしてスウィッチバックの真幸に着く。乗降客はいないが、運転時分にも余裕があり、運転手が3分ほど停車するとアナウンスすると、乗客の大半が車外に出た。この駅のホームには鐘があり、母娘で乗っている旅行者が交代でそれを鳴らしに行ったりしていて、ほのぼのとしたローカル線旅行の雰囲気である。


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 真幸を過ぎるといよいよ高い所へと登っていく。飛行機からの眺めのように、下界の風景が遠く広がる。長い隧道をくぐると、次の矢岳。ここも2分ぐらいの停車時間がある。高齢者の女性3人組が乗ってきた。このあたりの住人で、人吉へ出かけるのであろう。昔のままの木造の古い駅舎が残っている。


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 矢岳から人吉までの間には、ループ線がある。山野線が廃止された今日、九州唯一のループ線である。そのループの途中にスウィッチバックの大畑駅がある。ループ線もスウィッチバックも、勾配に弱い昔の鉄道に必須であったが、車輌の性能が上がった今日、時代遅れの遺物になりつつある。その両方が一度に味わえる日本で唯一の駅が大畑なのである。ループ線は、右へ右へと回り、回り終わる手前でバックしてスウィッチバックの大畑へ入る。ここも無人駅となって久しいが、地元の利用者が駅を大切にしているようで、案外荒れ果てていない。乗降客はなく、ここは停車駅も短かった。


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 大畑からは下る一方で、さきほど通った筈の線路の下を隧道で抜け、その後もいくつか小さな隧道を抜け、人吉盆地へと下っていく。そして人吉盆地に入ると右から旧湯前線のくま川鉄道が寄り添ってくる。あちらには、相良藩願成寺という駅がある。湯前線時代は東人吉駅だった筈だが、随分と凝った名前に改称したものだ。こちら肥薩線は、元幹線だけあって、駅間距離が長く、こういった市内駅はない。そのまま並行して、人吉のホームへと滑り込んだ。数少なくなった急行が向かいのホームに停車しており、この列車の乗客も何人かは乗り換えたようである。

 それにしても、途中僅か3駅の区間が1時間もかかるとは、駅間距離が長いからか、列車の速度が遅いからか、恐らくその両方であろう。ここはもはや、スピードアップをしたところで、それだけでは生き残れない。雄大な景色を楽しむ観光路線としての活路を見出すしか、将来はないのであろうか。鉄道本来の輸送上の必要性が薄れているのは寂しい限りだが、今後も末永い存続を願ってやまない。
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by railwaytrip | 2002-11-26 10:00 | 九州・沖縄地方


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