名鉄築港線・大江~東名古屋港

 全国には、朝夕しか運転されない工業地帯などへの通勤専用路線がいくつかある。かつては日中も運転されたけれども、殆ど乗客がなくて朝夕のみになってしまった、鶴見線の大川支線などもある。鶴見線自体、都会の中のローカル線として、それなりに有名である。その他、良く知られているのが、山陽本線の支線、通称和田岬線である。

 それらに比べてあまり話題にならないのが、名古屋市南部の臨海工業地帯を走る名鉄築港線である。名古屋から名鉄で知多半島の中部国際空港方面へ向かって急行で15分ほどの大江という所から分かれ、東名古屋港までの1.5キロを走る短い盲腸線だ。運転本数は、大江発の時刻表で見ると、平日朝(7~8時台)が9本、平日夕方(16~19時台)が13本、土曜は半分近くに減り、日曜はさらに減るものの、一応何本かは走る。わずか1駅なので、当然、1本の列車が行ったり来たりするダイヤで、終着東名古屋港での折り返し時間も短い。東名古屋港とはどんな所か、ある程度観察したいので、あまりすぐ折り返す列車を選ぶのはいやだが、そうかといって、1本見送ると今度は間が持たないかもしれない。そこで、夕方の2番列車、大江発16時30分の列車に狙いを定めた。この列車は、東名古屋港で折り返しまでの停留時間が14分あり、他の列車よりも長い。例えば夕方の1番列車は4分、3番列車は3分で折り返してしまう。

e0028292_4571191.jpg 大江駅は、構内は広く、鉄道の駅らしい駅であった。急行も停車するが、これは築港線接続のためというよりは、ここで普通列車との接続ができる構造だかららしく、実際の乗降客数は周辺の駅に比べても少ないらしい。それでも名古屋に近いので住宅が多い。地図によると、東へ1キロほどの所にはJR東海道線の笠寺駅がある。駅は橋上駅ではなく、線路の東側にしか改札口がない。線路を挟んで東側が住宅地、西側が工業地帯と分かれているような感じである。築港線のホームは一番西側の5番線で、モダンなステンレスの2輛編成の電車が停まっている。橋を渡って乗り換えようとすると、乗り換え通路に自動改札がある。同じ名鉄同士なのに何故かというと、これは乗り換えの中間改札ではなく、東名古屋港の出口の改札の役目を果たすのである。途中駅もない盲腸線なので、ここで築港線に乗り換える乗客は、100%が東名古屋港で下車するのだから、ここで東名古屋港までの運賃を徴収するという仕組みである。

e0028292_4581648.jpg 東名古屋港駅周辺は、住宅地ではないらしく、名古屋から見れば下り方向となるが、乗客は一人もいない。運転手と駅員が発車までの時間、雑談をしているが、駅員がタブレットを持っている。発車時刻になるとそれを運転手に渡し、駅員が手を挙げて出発合図をすると車掌がドアを閉め、発車。乗客は私以外に誰もいない。私一人のために冷房まで効かせてくれているような、申し訳ない気分になってしまう。

 発車するとすぐ、南下する本線(常滑線)と分かれて右へカーヴする。するとにわかに住宅地の気配は消えうせ、いかにも臨海工業地帯という感じの風景になる。線路は単線で、左にはいかにも産業道路といった大きな道路が走り、1つ2つ、踏切もあるが、僅か1.5キロだから、すぐ着いた。


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 右側に片面ホームがあるだけの、小さな無人駅である。改札もなく、切符の販売機もないが、ジュースの販売機はある。それなら切符の販売機を置くことも可能は可能だろうが、とにかくそういった設備はない。左前方には三菱重工の大きな建物がある。いかにも住宅などはなさそうな所だ。しかし駅前方が大きな交差点であり、車は多いし、駅の横には市バスのバス停もある。鉄道のない時間帯もバスは結構走っているようだ。線路は行き止まりではなく、先へつながっており(写真右上)、駅のすぐ先には大きな踏切もある。これは埠頭まで続いているらしく、稀に車輛を輸出する時などに使われるらしい。

 発車時間が近づくにつれて、三々五々という感じで乗客が集まってくる。外国人も何人かいる。きちんとネクタイを締めたビジネスマン風の人もいれば、工場で働いてきましたという感じの人、そしておばさんも若い女性も、要するに大企業の工場で働いている色々なタイプの人が乗客となり、全部で20人ほどになって発車。席は十分にある。そして所要3分だからすぐで、あっけなく大江駅へ戻ってきた。


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 大江駅に着くと、すぐに降りず、車内に座ったままの人も多い。これは、すぐに常滑線のホームに行っても列車が来ないからなのであろう。降りた何人かの人とともに階段を上がってみる。定期券を持っている人は、そのまま中間改札を通っているが、そうでない人は、改札の手前の自動券売機で、東名古屋港発の乗車券を買う必要がある。そうしている人が結構いる。やはりこの限定的なダイヤでは使いづらくて、定期を買わず、毎日は利用しないという人も多いのかもしれないし、あるいは毎日勤めている人ではなく、出張などで来た人なのかもしれない。

 名古屋方面へのホームに下りると、なるほど次の列車まで10分近くある。それであの人たちは冷房の効いた築港線の車内で座ったまま時間をつぶしているのであろう。
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by railwaytrip | 2007-07-02 16:30 | 中部地方


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