大糸線・南小谷~糸魚川

 大糸線は、松本と糸魚川を結ぶ線だが、線名は、信濃大町と糸魚川を結ぶ線という意味からついている。そして、実際の運行形態は、松本~南小谷と南小谷~糸魚川とに二分される。その昔は全線を走る急行もあったが、今は南小谷を境に完全に南北に分かれており、南はJR東日本による電化路線、北はJR西日本による非電化路線である。ゆえに、一本の線としての統一したイメージは薄いが、南北それぞれに違う味わいがあり、景色はどちらも素晴らしい。

 私が大糸線に初めて乗ったのは、高校生の時で、冬のスキーシーズン、白馬へスキーに行った時であった。行きは新宿から夜行の急行アルプスで早朝に着いたので、景色は見られず、帰りの急行から初めて見た、雪景色の青木湖の美しさは未だに忘れられない。その後、大阪に住んでいた時も、北陸線の夜行列車から糸魚川乗換えで白馬方面へのスキーに利用したことがあるし、当時はまだそういう乗客も結構いた。しかし時代は急激に変わり、スキーそのものが下火になり、列車で、ましてや夜行列車でスキー、などというのは、もう一般的ではなくなってしまった。そのため大糸線の南小谷以北は、四季を通じて1輛のディーゼルカーが寂しく往復するだけの、純然たるローカル線になってしまった。

 それにしても、久しぶりに特急で南小谷へやってきた。ここから糸魚川までの非電化区間は、途中下車をしながらゆっくり楽しむことにする。といっても、列車の本数が少なく、各駅に下車して、というようなわけにはいかないのだが。

e0028292_21214092.jpg 南小谷は、新宿からの特急が終着となるほどの駅だが、驚くほど寂しい所にある。これは昔も今も変わらない。途中駅の白馬の方が駅周辺にホテルや民宿が多く、観光化している。冬のスキーシーズンだけでなく、夏も登山や避暑の都会人を受け入れており、都会の若い女性も降り立つ駅である。南小谷はそういった華やかさもなく、ただ鉄道のターミナルとして、かろうじて多少の活気が見られる程度である。一応、小谷村の中心駅なのだが、駅前を姫川が流れており、特に賑やかな集落があるわけでもなく、山村の小駅の風情である。

 南小谷~糸魚川間の非電化区間を走るのは、キハ52という年代物の気動車で、これが近年、国鉄色に復元されたことから、鉄道マニアの人気を呼んでいる。これを目当てに来たと思われる乗客もいるし、途中の駅や線路沿いに、カメラを構えている人も見かけた。確かに昔懐かしい古い車輛である。それにしても、1輛でも空席たっぷりの乗客数は、平日の日中とはいえ、寂しい限りだ。

 この沿線は、険しい渓谷をなす姫川と、フォッサマグナが通る険しい山岳地帯だ。南小谷を出るとほどなく集落も途切れ、渓谷に沿った深い山中を1輌の気動車はけなげに進む。長野県から新潟県への国境越えに向かっているのだが、地形的には白馬方面から既に日本海側であり、海へ向かって下る一方なのだ。ちなみに大糸線の分水嶺は、簗場~南神城間である。


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 最初の停車駅、中土、乗降ゼロ。狭いホームに小さな山村集落という無人駅だが、かつてはここが大糸南線の終着駅であった(写真右上)。ここから小滝までが最後に開通した区間で、平らな土地が殆どない姫川沿いの険しい絶景続きの区間だ。裏を返せば、土砂崩れを始めとした災害多発区間でもある。次は昔から単線の小駅である北小谷、長野県最後の駅である。ここも小さな集落があるが、いかにも利用者が少なそうな駅で、やはり乗降ゼロであった(写真左下)。


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 長い隧道を抜け、姫川を渡ると新潟県。左手に新しいモダンな温泉宿が見えるとまもなく平岩に着く。新潟県最初の駅で、山峡ながら一応の集落があるが、活気は感じられない寂しそうな駅前であった(写真右上)。昔はそれなりの駅だったはずだが、今はここも無人駅で、交換設備は残っているが、ここでの列車行き違いはない。ただ、朝夕に糸魚川からここまでの区間列車が折り返すことで、糸魚川寄りの新潟県最後の駅として、終着駅的役割を担っている。朝夕はどれほどの利用者がいるのだろう。次回はその時間に乗ってみたいと思う。


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 平岩を出るとほどなく進行右手、姫川の対岸に温泉街が見える。古びた旅館が多く、寂しげに見える。ここは姫川温泉で、長野県に属する(写真左上)。そう、このあたりは姫川が長野・新潟の県境になっているので、線路は新潟県でも、対岸の温泉街は長野県なのである。その後は線路も鉄橋で姫川を渡り、一旦長野県に入る。車窓左手に姫川が流れる間は長野県。対岸の道路は新潟県を走っている(写真右上)。再び鉄橋で姫川を渡り、また新潟県に入ると、次が小滝、かつての大糸北線の終着駅である。しかしそんな時代があったことも、今では想像できないほどに寂しい駅だ。水力発電所のオフィスがあるだけで、一般の民家は殆どない(写真左下)。勿論無人駅で、交換設備も撤去されて久しく、木造の古い駅舎が侘しく佇んでいる。発電所の事務所前にはそれなりの車が停まっているが、果たしてここに働く人で、大糸線で通っている人はいるのだろうか。


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 列車はなおも姫川に沿って渓谷を下る。ようやく線路際に多少の水田などが現れ、少し地形がゆるやかになったと感じられると、根知に着く。ここは列車交換のできる、相対ホームがある、駅らしい駅だ。そしてもう一度多少の山を見ながらも、確実に平野部に降りてきたことが実感でき、集落も増えてくると頸城大野に着く。写真右上は、頸城大野到着前の車窓。これまで途中駅の利用客は殆どなかったが、ここからは糸魚川へ出かけるらしい地元の人が数名乗ってきた。昔は次が糸魚川だったが、今はその間に、その名も姫川という駅ができている。実際の姫川も近くを流れてはいるが、駅前には大きく立派な姫川病院があり、住宅も多く、南小谷以来つきあってきた険しい姫川のイメージではない。


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 そして住宅や工場を見ながら進み、左から北陸本線が合流してくると、今も広い構内を持ち、鉄道主要駅の堂々たる風格を保つ糸魚川に着いた。北陸線に乗り換える人は少ないようで、殆どの客はここ糸魚川の改札を出たようである。
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by railwaytrip | 2007-07-10 13:00 | 中部地方


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