東京都心で時間が3時間ほど空いた時、何をするか、どこへ行くか。選択肢は山ほどありそうで、意外と悩む。この日はふと思い立って東京駅から湘南電車に乗ってみた。昔ながらの湘南色の113系という車輛が余命いくばくもないと聞いたからでもある。それでどこまで行けるかというと、小田原はきついが、大磯あたりまでなら行って戻って来られそうだ。けれどもとんぼ返りの忙しいのもいやだと思い、辻堂で降りてみた。
辻堂で降りるのは、多分20年ぶり以上だと思う。昔の記憶も殆ど残っていないのだが、橋上駅でなかったことは確かだ。当時は国鉄の駅らしい駅で、旅情を感じさせる駅舎があったと思う。つまり、川崎、横浜、大船、藤沢と、主要駅ばかりに停まってきた湘南電車が、ようやく普通の小駅に出会う、その最初の駅が辻堂というわけだ。子供の頃「東京から大阪まで全部の駅に降りて写真を撮りながら行きたい」とある大人に言ったら、「そんな事わざわざしなくても、辻堂の写真を撮っておけば、あとは皆似たようなものだ」と言われたことがある。勿論そんなはずはないが、辻堂とは、そういう乗り換えもない東海道本線の小駅の象徴、というイメージも少しあるのである。 勿論、今日の辻堂は、もう少し先の大磯とか、早川、根府川あたりと較べても、相当に異なった、都会風の駅になっている。立派な橋上駅で、駅周辺も高層マンションも多い。東京近郊のベッドタウンの数多い駅の一つに過ぎず、旅情を感じるには難がある。それでも、このあたりが湘南ですよ、と言われれば、意識すれば何となくそんな空気が漂っているかなあ、と思うが、その程度にまで、このあたりでは地域性というか個性が薄まってしまったと思う。 橋上駅を出て北口側は、駅前にえらく広い空き地があるが、ここは関東特殊製鋼の跡地だそうで、藤沢市が中心に再開発を進めているそうだ。南口が昔からの駅前で、古い商店も多少はあるが、概して最近の発展とともに進出してきたチェーン店や新しいモダンな店などが多く、これらも今の辻堂駅を没個性化しているには違いない。 用もないのに久しぶりの辻堂に降り立って、それなりに感じることはあり、つまらなくはなかった。しかし旅としては、格別のこともなく、ましてここで旅情を感じるのはもう無理だと悟った。もう一生乗降しないかもしれないと思いながら、やってきた113系東京行きの客となった。
by railwaytrip
| 2005-07-06 18:00
| 関東地方
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