大阪府から隣の府県へ行く境界越え区間には、大都市近郊であることを忘れさせてくれるような鄙びた山越え区間があって、ポツンと小さな駅がある所が多い。京阪間の山崎も、ややその気配が漂うが、一番顕著なのは阪和間で、JR阪和線の山中渓と、ここ南海本線の孝子が、横綱級ではないかと思う。
大阪難波から南下する南海本線は、多くの町、多くの駅を経て、大阪府南端のみさき公園まで来る。路線図だけを見ていると、和歌山市まであとたった3駅しかないので、全列車が和歌山市まで行ってもいいのではと思ってしまう。しかし、列車本数はここでかなり減り、この先、日中は、優等列車と各駅停車がそれぞれ日中毎時2本ずつの運転となる。途中の孝子と紀ノ川は、各駅停車しか停まらないが、和歌山市に近い紀ノ川には、他に加太線の列車もある。そうすると、取り残されたここ孝子が唯一、本当に30分に1本しか列車が停まらない駅なのである。 ここは大阪府岬町に属する。大阪側から来ると、峠のすぐ手前になる。孝子を出た列車は間もなく和泉と紀伊の国境超えの孝子隧道に入り、出ると紀ノ川の流れる和歌山平野へと下っていく。国道26号線が線路と並行しており、孝子の駅前も通っている。国道を行く車の多さのせいか、とりたてて寂しい感じはしない。 駅は無人化されており、自動改札がある。駅舎は上りホームの前方にある。小さいが、特に趣のある建物ではない。下りホームとの行き来は、今や都市部では珍しくなった構内踏切で結ばれている。下りホームに、年代ものの小さな木造の待合所があり、それ以外の部分には屋根もない。上りホームは短い屋根があるが、和歌山方の大部分は上下とも屋根もなく、大雨の日に知らずに降りてしまうと、改札口までの間に相当濡れてしまうだろう。駅名標は新旧さまざまなタイプが見られるが、駅舎に近い側には相当レトロなものが残っていて、味わい深い。 乗降客は、というと、少ないが、ゼロというわけではない。けれども30分に1本でも、一列車数名という感じで、列車本数を増やす必要も、急行をこの区間だけ各駅停車にする必要もなさそうだ。改札を出て国道を渡ると、その向こうには集落があるが(写真左下)、規模は小さい。昔ながらの家が多く、この駅周辺には宅地開発の波も及んでいないようである。山が迫っているが、多少の平地に水田もあったりする。 それでも、通過列車も含めれば、それなりに列車本数は多く、長い編成の列車がしばしば行き交う。初めて訪問した者としては、待っている間も退屈はしない。難波寄りから比べてみれば、相当なローカル駅だが、それでも流石は南海本線である。
by railwaytrip
| 2007-06-28 16:45
| 近畿地方
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