北陸本線・福井~粟津

 北陸地方の普通列車には、まだ国鉄型車輛が多い。オーソドックスな急行型や近郊型に混じって、寝台特急電車改造の不思議な車輛もあって、なかなか面白い。しかしこれらも敦賀の方から順次新型車輛への置き換えが始まっているので、余命も長くないかもしれない。そう思って、国鉄時代の旅を彷彿とさせるような、北陸本線鈍行旅行をしばし味わおうと福井へやってきた。


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 土曜の朝、8時41分発の金沢行に乗る。411系という国鉄時代の近郊型車輛で、当時の面影が良く残っている。平日なら通勤通学時間帯だが、それでも福井から金沢方面の下りに乗る通勤客は多分少ないだろう。6輛編成と、それなりの長さなので、空いているが、客層はというと、家族連れや若い女性のグループなどが結構多い。

e0028292_4321752.jpg 福井の近郊区間は4つ目の芦原温泉までである。最初の駅、森田も、改札のある右手こそそれなりに開けており、マンションなどが建っているが、左手は一面の田園だ。そんな所を一駅ずつ停まりながら行くのだが、各駅とも下車よりは乗車の方が多い。芦原温泉(写真左)でも結構乗ってきた。一般的に言うと、ここから峠を越えて県が変わるのだから、芦原温泉までで一旦ガラガラになって、峠を越えた大聖寺ぐらいから、金沢へ向けて段々と客が増える、という感じなのが、県境越え区間のパターンである。しかしここはそうではない。きっと週末は福井県側の人達も、遊びや買い物の目的地は、県都福井市よりは、金沢なのであろう。北陸三県における金沢の求心力はかなり強いようである。


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 芦原温泉を過ぎると谷が迫ってきて、細呂木、牛ノ谷という2つの小駅を過ぎる。細呂木(写真左上)はまだ駅前に人家も多いが、牛ノ谷(写真右上)はこの区間で一番閑散とした、山の中の駅で、駅周辺に建物もあまり見られない。そんな駅でも若干の乗車客がある。牛ノ谷を発車するとすぐ、県境の牛ノ谷隧道に入り、出ると石川県になる。峠越えといえば、富山県との境にも、倶利伽羅峠という山越えがあり、倶利伽羅駅というひっそりした小駅がある。加賀の国(石川県)は、北陸本線以外に県境を越える鉄道がなく、その鉄道も両県境ともしっかりした峠越え区間で、国境越えの雰囲気がある。加賀に独自の文化が育った背景には、そういった地形的要素もあろう。しかし現代の人々はそんな意識もなく、気軽に県境を越えて金沢へ遊びに行く。

e0028292_4335989.jpg 牛ノ谷隧道は、1キロもなく、長い隧道の増えた今日ではものの数にも入らない。出るとゆるいカーヴを平野へとゆっくり降りていき、住宅が増えてくると、石川県最初の駅、大聖寺(写真左)に着く。もともと大聖寺はこのあたりではちょっとした主要駅で、駅周辺にもそれなりの集落があり、かつては山中温泉へ行く北陸鉄道も出ていた。その跡地はホームや線路こそ撤去されているが、今も空き地として残っており、ここだなとわかる。実は私も小学生の頃、家族旅行でこれに乗って山中温泉へ行った。駅自体もそれなりに立派で風格がある。特急こそ殆ど通過するが、主要駅の風格を今も保つこの駅からは、大勢の客が乗ってきた。

 大聖寺の次は、元は作見(さくみ)という小駅であったが、今は加賀温泉といい、特急停車駅である。このあたり一帯は加賀温泉郷で、海側、山側それぞれに、大小いくつもの温泉地があり、特に関西の奥座敷としても発展してきた。かつては大聖寺、動橋(いぶりはし)、粟津、小松と、作見を除くと各駅が急行停車駅クラスの駅であり、私鉄やバスで温泉地と連絡していた。そのうち大聖寺、動橋、粟津の3駅の機能を集約すべく、作見を加賀温泉と改め特急停車駅にしたわけだが、それから既に38年が経つ。今は作見駅時代を知らない人が多数派であろう。優等列車通過駅に降格された、大聖寺、動橋、粟津の3駅は、いずれもそういう意味では寂れてしまった。その加賀温泉は、特急が停まり便利な駅だが、特急券のいらない普通列車もそれなりに人気があり、ここでも乗車が結構いる。

 その次が難読駅の動橋で、駅の手前、田んぼの向こうにぼんやりとビル街が見えるのが片山津温泉である。加賀温泉郷を代表する温泉街の一つで、動橋が最寄り駅だったが、歩けるほど近いわけでもなく、バスやタクシーなら加賀温泉からでも大差ない。そのため、片山津温泉へ行く人が動橋駅を利用しなくなって久しい。動橋駅衰退の理由の一つであろう。それでもここからも金沢へ行くらしい地元の若い人が賑やかに乗ってきた。既にボックス席は殆ど埋まってしまい、デッキに立つ人もいる。

 次が粟津である。私はここで降りる。どこもそうだが降りる客は僅かで、乗る人が断然多い。ここにも粟津温泉という温泉地があるが、山中・山代・片山津に比べると知名度も低い。明らかにこの駅が最寄なのだが、バスも小松からしか出ていないらしい。かつてはここも北陸鉄道で結ばれていたそうだが、ここは廃止が1962年と古く、流石にもう何の面影もないようである。駅周辺は住宅と工場が多く、その工場の多くが小松製作所関連らしい。というわけで、観光客の利用は殆どない、日常的な駅である。特急が停まらないからそうなったとも言えよう。しかしホームが2つあり、駅舎とは地下道で結ばれている。その地下道は古くて薄暗いものの、風格がある。元急行停車駅の貫禄は十分である。駅舎も昔からの木造のようだが、だいぶリニューアルされているのか、ぱっと見た感じは古びていない。

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 地方の鈍行列車といえども、6輛編成と長く、駅ごとに賑やかにお客が乗ってくる様子は、一昔前の鉄道の活気を今に伝えてくれた。この先、小松から金沢へ向けて、さらに賑わうのであろう。このまま金沢まで行きたかったが、時間の都合でここまでしか乗れないのがちょっと残念であった。

※ 一部の写真は、戻る時の上り列車から撮影していますので、実際この列車から見られる風景とは若干異なります。
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by railwaytrip | 2008-07-05 08:41 | 中部地方


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